薬の服用とお水

2022年06月06日

「薬は水かぬるま湯で飲んでください」と書かれているものがほとんどです。今回はその理由について紹介します。

内服薬の服用

錠剤やカプセル、粉薬を飲むときは、「水かぬるま湯で飲む」ことが基本です。 内服薬は口の中で唾液や水と混ざり、食道を通って胃に運ばれます。水を含まずに薬だけを飲み込むと、食道や胃の粘膜に直接触れ、それが刺激になって粘膜に障害(潰瘍や出血)を起こすことがあります。特にゼラチン製の殻に入ったカプセルは、唾液など少量の水分ではベタベタして、のどや食道に引っかかりやすくなるので注意が必要です。

また、内服薬の周りに水分があると、有効成分が溶け出しやすくなります。そのためには、コップ1杯(180~200ミリリットル程度)の水やぬるま湯と一緒に飲むとよいとされています。メーカーは、水と一緒に飲んだ場合を想定して安全性を担保しています。


一緒に飲むと良くないとされる飲料


アルコール

多くの薬の働きに影響を及ぼため、絶対にお酒で薬を飲んではいけません。

特に催眠鎮静薬や抗アレルギー薬と一緒にお酒を飲むと、作用を増強させてしまい、強い眠気や意識障害を引き起こす危険性も考えられます。

このほかに、薬とアルコールの相互作用として、有効成分の血中濃度の上昇による作用・副作用の増強、中枢神経の抑制による呼吸抑制や心停止、アルコールの分解を抑制することによる頭痛、嘔吐(おうと)、顔面紅潮、血管の拡張による起立性低血圧や失神―などが挙げられます。


カフェインを多く含む飲み物(緑茶、紅茶、コーヒーなど)

中枢神経を刺激するカフェインも、薬との相性が良くない物質の一つです。

例えば、総合風邪薬には解熱や鎮痛のためにカフェインが多く配合されているものもあります。これをカフェインを多く含む飲み物と一緒に飲むと過剰摂取で作用が強く出てしまい、薬の効果を低下させたり 不眠などを引き起こします。コーヒーや紅茶などを飲んだ場合は30分以上空けてから薬を飲むようにしてください。

また栄養ドリンク剤の中にもカフェインを多く含むものありますので注意しましょう。


牛乳

カルシウムやたんぱく質を豊富に含むため、薬との相互作用を引き起こしやすいので注意が必要です。抗生物質の中には有効成分が牛乳中のカルシウムと結合して、効果が半減してしまうものがあります。

また、牛乳はアルカリ性で胃酸を中和する働きがあり、カルシウムが多く入っているので薬の服用には向いていません。胃の中の酸性度が下がると、胃酸から薬を守るためのコーティングが破壊されてしまう薬があります。薬のカプセルやコーティングには胃の酸では溶けず、小腸のアルカリ性寄りのpH値で溶けるものがあります。牛乳で飲むと小腸に届く前に胃で溶けてしまうため、薬の効果がなくなってしまいます。 特に、腸での効果が期待される便秘薬などは、牛乳で服用すると胃の中で錠剤を覆っているコーティングがはがれてしまい、有効成分が溶け出してしまいます。


ジュース

特に、グレープフルーツジュースはフラノクマリンという物質を含むため、肝臓の代謝酵素の働きを弱めてしまい、不必要に薬の成分を体内に留めてしまうことがあります。 そのため、薬の代謝に時間がかかってしまい、効果を増強させることがわかっています。主に、降圧薬(カルシウム拮抗薬)や抗血小板薬といった、医療機関で処方された薬では注意が必要です。


スポーツ飲料

また、スポーツ飲料水は、カルシウムなどのミネラルが含まれているために薬の成分を弱めることがあります。


硬度の高い水

硬度の高い水にはカルシウムやマグネシウムなどのミネラル分が多く含まれています。薬の成分の中にはカルシウムとくっつきやすいものがあるので、薬の働きを低下させて吸収が悪くなってしまうことがありますので注意が必要です。


まとめ

「お腹に入ってしまえば同じ...」と思う方もいるかもしれませんが、正しく服用しないと思わぬ副作用を起こしたり、期待される効果が出なかったりとデメリットが大きいです。 

薬を服用する際には注意事項を読み、服用するようにしましょう。


参考文献:薬の飲むときに水が必要な理由 

薬はなぜ水で飲まないといけないのか