給水方式の仕組み
水道は、浄水場から水道管によって使用場所の近くまで運ばれていて、そこから各蛇口へ給水されています。今回は給水方式の仕組みと種類について紹介します。

水道が蛇口から出る仕組み

水道は浄水場から配水管を通して、配水される場所の近くまで運ばれてきます。このような配水管は公道の下を通っていることが多く、管理は水道局によって行われています。
この配水管から各家の蛇口まで水道管が設置されていて、このような水道管の管理は蛇口を使用している建物の所有者が管理をする必要があります。そのため、この水道管が劣化した場合は各自の負担で修理する必要があります。
また、集合住宅など高さがある建物の場合は水道管以外にも給水設備が必要になり、管理費用は管理費に含まれていることが多いです。
●給水方式の種類
給水方式には、大きく「直結給水方式」と「貯水槽水道方式」があります。
●直結給水方式
メリット
・貯水槽を経由せずに蛇口まで水道水を直接給水するので、より安全でおいしい水を供給することができる。
・貯水槽の点検・清掃が不要で、貯水槽の維持管理費が不要となる。
・貯水槽のスペースが不要なため、敷地を有効活用できる。
・配水管の水圧を有効利用するため、貯水槽式給水より少ない電力で給水が可能。
デメリット
・事故や災害時等に、貯留機能がないため断水することがある。
●貯水槽(受水槽)水道方式
メリット
・事故や災害時等に、貯水槽内に残っている水を使用できる。
デメリット
・貯水槽の定期的な点検や清掃などの維持管理が適正に行われていることが必要となる。
・貯水槽で一旦水を受けるため、エネルギーを有効に活用できない。
これまで、ビルやマンションなどの給水方式は、水道水を一旦受水槽に受けた後、ポンプで直接または高置水槽を経由して各階に給水する『受水槽式給水方式』とされていました。
しかし近年では、多くの自治体が高層建物への受水槽水道方式から直結増圧式給水の拡大を図っています。
●直結給水方式が推奨される理由
1.貯水槽内の衛生状態への懸念
法律上は、貯水槽の設置者又は管理者が1年ごとに1回、水質も含めた点検・清掃などの維持管理することになっていますが、必ずしもすべてが良好に維持管理されていないため、貯水槽水道における残留塩素の低下や水質の変化等が問題となっています。
また、以前よりも貯水槽内の水が滞留する時間が長くなり、その結果、水中の残留塩素の濃度が低下し、衛生状態が悪化するケースもあります。
この背景には、節水機能の高い水洗トイレや洗濯機の普及、ペットボトル型飲料水の利用機会が増えるなどの生活スタイルの変化、単身・共働き世帯の増加に伴う住戸の滞在時間の減少などが影響しているようです。
2.直結方式で給水可能な建物の増加
近年、増圧ポンプの口径が拡大されるなど、給水装置の技術開発が進んだため、貯水槽を経由しなくとも水道から各住戸に直接給水できるマンションが大幅に増えたという事情があります。
さらに、これまでは不可能と考えられていた20階以上の高層マンションでも、増圧ポンプを多段階に設置すれば直結式の給水が可能になっています。
まとめ
それぞれの給水方式によってメリット・デメリットがあるため、戸建住宅、マンション、商業ビル、学校など建物の種類や規模、給水高さ、敷地のインフラ環境によって、より良い給水方式が選ばれています。
水道管から直接蛇口まで増圧ポンプで給水する直結増圧式給水は、受水槽式給水と比べてより安全でおいしい水の供給や省エネルギーの推進、建設費と維持管理費の低減が期待でき、直結多段増圧式給水の導入により、これまで中高層階までだった高さ制限がなくなり、より高層の建物への直結式給水が可能となりました。
受水槽方式はデメリットが多いように感じますが、断水時にも一定量の給水ができるという点で、病院や避難所など災害時でも給水を止めることができない建物では多く採用されています。
皆さんがお住いの家はどの給水方法なのか、一度確認してみてはいかがでしょうか。
参考文献:東京都水道局 横浜水道局 AllAboutビジネス・学習